高度経済成長期
自動式電気炊飯器
概要
1955年12月に光伸社(現サンコーシヤ)によって開発され、東京芝浦電気(現 東芝(1984年に社名変更)、以下「東芝」と呼ぶ)から発売された電気炊飯器ER-4は、「三重釜間接炊き」とバイメタル技術を組み合わせることにより、四季折々に気候環境が移り変わる我が国において、いつでも手軽に安定した品質のコメを炊き上げることを可能にした自動式電気炊飯器の国産第1号製品である。直接火を用いることなく自動でコメを炊くことを可能にした電気炊飯器の出現によって、台所仕事の負担を大幅に軽減するところとなった。
かつて、炊飯は非常に手間のかかる仕事であった。外気温などの条件に合わせて火加減をこまめに調節する必要から炊けるまでつきっきりの仕事にならざるを得なかった。
こうした炊飯の光景は、自動式電気炊飯器の出現を契機として、急速に姿を消していくことになる。自動式電気炊飯器を用いることで、誰でも失敗することなくおいしいコメが炊け、寝ている間に翌朝のご飯を炊くことができるようになった。
図1 自動式電気炊飯器ER-4(1955年)
画像提供:東芝
自動式電気炊飯器の普及スピードは極めて速いものであった。1955年の第1号機発売の後、1960年の自動式電気炊飯器の世帯保有率は28%、1971年には早くも90%に達し、1980年以降には95%以上の世帯が保有するに至っている1。また、自動式電気炊飯器の普及は国内にとどまらず、現在ではコメを主食とするアジア各国においても広く利用されるようになっている。従来の炊飯の方法を根底から覆し、多くの人々の生活様式を一変させたという点において、自動式電気炊飯器の開発は、日本が世界に誇る画期的イノベーションということができるだろう。