令和3年度全国発明表彰 受賞発明・意匠概要(敬称略)
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未来創造発明賞
磁気記録の進化に資する配向性多結晶MgOトンネル磁気抵抗素子の発明(特許第5120680号)
湯浅 新治 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域 新原理コンピューティング研究センター 研究センター長 |
未来創造発明貢献賞
石村 和彦 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 理事長 兼 最高執行責任者 | |
濵口 道成 | 国立研究開発法人科学技術振興機構 理事長 |
本発明は、巨大な磁気抵抗効果を持つトンネル磁気抵抗素子(MTJ素子)を量産可能な形で実現し、磁気記録の進化に資するものである。
従来のMTJ素子では、トンネル障壁(極薄の絶縁体層)に非晶質の酸化アルミニウムが用いられてきたが、磁気抵抗効果が小さかったためその産業応用は限定的であった。
本発明では、トンネル障壁に配向性多結晶の酸化マグネシウム(MgO)、強磁性電極にコバルト(Co)、鉄(Fe)、ホウ素(B)を含む磁性合金などを用いることにより、従来の約10倍に達する巨大な磁気抵抗効果と優れた量産性を実現した。
本発明のMTJ素子は、現在すべてのハードディスク(HDD)の磁気ヘッドに採用されており、大容量HDDの実現により情報化社会の高度化に貢献している。また本発明は、電源を切っても記憶情報が消えない不揮発性メモリSTT-MRAMとしても実用化されており、スマートフォンやパソコンの省電力化と高性能化につながると期待されている。
図1 トンネル磁気抵抗効果の概念図 | 図2 | 本発明のMgOトンネル磁気抵抗素子と様々な産業応用 |