本意匠は、ろう者と協働で開発した60~90dBの音を256段階の振動と光の強さに変換し、音の特徴を伝達するヘアピン型の装置に関するものです。全国のろう学校の約8割において実際に導入され、発話・発音練習や音楽・ダンス教育などで活用されています。さらに、複数人が装着した本製品を同時に制御できるコントローラを開発し、映画やスポーツ、狂言、演奏会では、ろう者だけではなく健聴者に対しても臨場感や一体感といった付加価値を生み出しています。

　開発当初、音の大きさを光で表す装置を試作しましたが、普段視覚情報に頼って生活しているろう者にとって、さらに光が加わるのは負担であることが分かりました。そこで、振動によって伝える方法を取り入れ、装着方法について工夫しました。ヘアピンのように髪の毛に装着できるほか、補聴器や人工内耳使用者も服や襟元など好きな場所に取り付けることが可能です。充電はマグネット式を取り入れ、1つの充電スタンドで、本製品とコントローラの両方を充電できるようにデザインしました。

　この度は、栄えある賞に選出いただき、本当にありがとうございます。「世界中のろう者に本製品を届けたい」という想いに共感し、デザイナー、エンジニア、マーケター、法務知財の方々が一つになってプロジェクトを進められたことで、ろう学校の子供たちの笑顔を生み出せたのだと思います。いつも支えてくださっている方々に心から感謝するとともに、これからもデザインやテクノロジーを用いて、世界に多くの笑顔を生み出せるよう全力で精進して参ります。